分光分析の可能性を広げる、スペクトラ・コープはCarl Zeiss社製分光器の日本代理店です。

分光分析チュートリアル

各アプリケーションに対するCarl Zeiss社製分光器の有用性

はじめに

昨今では測光の需要が高まり、フィルムや液体サンプルなどの反射・透過率、膜厚計測、食品の非破壊測定、LEDや有機ELの光度・輝度、とその幅広さは他に類を見ず、それを検出する為の分光器も、各種世に出ています。
ここでは特にCarl Zeiss社の分光器の設計概念、理論・特徴と言ったものをご説明し、各種アプリケーションへの有用性をご説明します。
通常のスペクトロメータやモノクロメータは、そのほとんどにおいて、回折媒体、入射・出射スリット、平行ビームを作り上げる為の光学部品によって構成され、波長データの記録においては、出射スリットの後ろに配置された光検出器が、グレーティングや出射スリットが可動している間に、入射した光を連続的に検出を行います。
分光器内各部の可動にはメカニカルな動きが前提とされ、時間を要することは勿論、それ自体が光測定上、トラブルになることでさえ多々あります。 多くのアプリケーションにおいて、測定時間を短縮し、外的要因に影響を受けない構造を持つ分光器は、以上に挙げた問題点をクリアすると言えます。

分光器構成及び基本仕様

分光光学系の主要部分は凹面回折格子と一次元フォトダイオードアレイで構成されています。
受光部分は、SMAカップリングによるバンドルファイバー、またスリット機構を設けないクロスセクションコンバータとなっております。

概念

分光デバイスの大きさというのは、グレーティングのマウント、入出射スリット、検出器、そしてイメージングミラーなどによって決まります。物理的には、高分解能な検出を求める場合の焦点距離が大きくなることも問題となります。
可視光領域対象の分光器本体は、UBK7(ガラス)製でできており、ガラスの曲率がついた底面にグレーティングが直に刻まれ、グレーティングが動いたり、ガスや塵によって汚れる心配は全くいらず、光学的に密集された光を効率良く回折できます。

回折格子(グレーティング)

凹面回折格子は平面回折格子と異なり、凹面鏡などの結像素子を用いずに分光光学系を構成できるという利点があり、各種分析機器をはじめ、広い分野で用いられます。
グレーティング自体が、出射スリットを兼ねているフォトダイオードアレイに光のイメージを結像します。
グレーティング上の刻線数の多様性と曲率がかかった刻線の採用により、コマ収差や非点収差を修正し、焦点カーブをフラットにし、フラットな構造のフォトダイオードアレイが最適に光検出できる焦点カーブを確保します。
この収差補正済み凹面回折格子(グレーティング)の高い精度での設計により、ファイバースリット部から入射した像を、そのままフラットフィールドの受光素子へと結像することが可能となります。
これが、理論に乗らない設計を行っていると、像が糸巻き形や樽型へとゆがんでしまう原因となります(図1)。


(図1)結像の歪み

イオンビームエッチング法

格子溝はレーザの2光束干渉法を利用したホログラフィック露光法により、光の精度で製作されています。 しかし、この手法では格子溝がサイン波の形状になってしまう(図2)と言ったデメリットもあります。
これを解消するために、Carl Zeissではイオンビームエッチング法(図3)によりブレーズ加工をしています。よって、各種のブレーズ角(ブレーズ波長)を持つブレーズドホログラフィックグレーティングを作成することが出来るのです。これにより高い効率で強度を稼ぐことが可能となります。


(図2)ホログラフィック露光法


(図3)イオンエッチング法

波長精度

分光器は如何に波長を正確に捉えるかが重要になってきます。
検出素子を固定化することにより、Carl Zeiss製分光器の分解能は可動部分を伴った通常の分光器と違い、検出素子内の基線の中心線に対して、二つの左右に隣接した基線を確実に識別します。二つの左右に隣接した基線が固定化された検出素子上で識別される場合、スペクトルの中心線が山の頂点の部分 I2に二つの隣接した線が(I1,I3)存在します(図4)。
それらの三つの線は光強度として I2 < 0.81×I1(I3)という関係であれば分割され、波長(⊿λ)というのは実質二つの素子上の二本の線で表されます。従って、波長を三素子に跨って読み取ることにより、スペクトル自体の重心を求めることができます。これがCarl Zeiss製分光器の信頼できる波長分解能の理由です。


(図4)ピーク波長の算出

ファイバー入射機構

Carl Zeiss社製分光器は、基本的にSMAカップリングによるファイバー入射機構を採用しています。
ファイバーはクロスセクションコンバータ方式になっており、一般的な分光器で使われているような入射光をスリットで切り分けるものより、入射光全てを無駄なく分光することができます。また、石英製のファイバーはNA=0.22となっており、回析格子のFナンバーと一致しております。
その為、1:1の光学系を実現しており、非常に明るい分光器であると言えます。


クロスセクションコンバータ

ファイバー入射にする利点は他にもあります。回析格子を使う以上、どうしても避けられない問題に偏光特性がありますが、ファイバー入射を行うことにより、内部反射を繰り返し、偏光がスクランブルされ解消されていきます。
実際に実験したところ、偏光角による強度のピーク・バレーで0.2%以下の影響に留める事ができました(図5)。



(図5)偏光特性グラフ2種

フォトダイオードアレイ

クロスセクションコンバータによるスリット機構から入射したイメージ(高さ×幅)と 1:1で対応する(図6)サイズになっており、表面に二次光カットフィルターをコートしてあります。
間に余計な機構を(遮光板など)を介さないので、迷光を抑える働きも持っています。また、そのダイナミックレンジは14bitと広く、S/N比で5000:1(モデルにより10000:1)という高い精度を誇っています。


(図6)9:1光学系

証明

以上の説明の証明と分光器の評価方法として、いかにスペクトルの左右対称性(シンメトリー)を実現するかというものがあります。これが満足している分光器こそ「理論に乗った分光器」であると言うことができます。
今回テストに使用した分光器はCarl Zeiss社製 MCS-NIRになります。
水銀灯の基線を測定したときに、分光器の有効波長範囲内の全基線を0.3nm以下にとらえており、またひとつのピークを拡大したときに、その確かな対象性が確認頂けるかと思います(図7)。


(図7)水銀灯の基線スペクトル

拡大図のスペクトルをピークで分割し、左右反転させて重ね合わせると、左右対称性がよりご理解頂けます(図8)。


(図8)ピークを左右反転して重ね合わせたもの

最後に

Carl Zeiss社製の分光器の有用性は高いものですが、実用化の段になりますと、その他の問題点に直面することが多々あります。それは光を計測するという特殊性に起因するものであり、これらを如何にして解消するかに分光器を含めた総合的な「計測装置」としての性能に直接的に関わってきます。
超小型分光器によるアプリケーション(光学膜厚測定、反射/透過率測定、液体濃度測定など)は分光技術仕様が関心を集めており、弊社の超小型分光器のサイズや高い信頼性を知られた方々は、この装置化というテーマで真剣に検討しており、それに基づく問題点を弊社としても測定データ検証と、今までの経験で解決策を提案しております。
分光器自身に優れた特徴はありますが、これは入り口にしかすぎません。実用代を考えたときに、今までお気づきにならなかったような問題点が出てくることもあります。それらの光を使用する開発に弊社の営業/技術スタッフを含め、共同開発の感覚で協力していきます。これが、スペクトラ・コープという社名の由来となっており、分光技術を広く多くの方に的確に使用して頂くというのが会社としての理念です。

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